ホテルグランフェニックス奥志賀ができるまで
《田島和彦自伝》

29. スポーツウェアの名門KAPPAを再建する

1983年にはイタリアのMCT社と技術提携を行い、KAPPAブランドのスポーツウェアを発売した。スキーウェア、ゴルフウェアにスポーツウェアが加わって、これで三本柱がそろったことになる。KAPPAはとりわけサッカーのウェアを中心に展開し、ユベントスやACミラン、ASローマなど名門チームと契約を結んでいるブランドだったから、90年のJリーグ立ち上げに向けて大きな盛り上がりを見せていた日本のサッカーシーンで大いにもてはやされた。

が、これにはじつは表に出ない事情がある。もともとKAPPAは上記のサッカーウェアのほかにも、カール・ルイスやエドウィン・モーゼスを擁するアメリカの陸上ナショナルチームと契約するなどの実績があったところ、創立者でもある前任の社長が急逝したのち、その弟が会社を継いだが、数年後、倒産してしまった。そんな折、創立者と一緒に会社を経営していたMr.ボリオーネという人物から、KAPPAブランドを立て直したい――ついては日本を中心に新たな経営の柱とするべく、新会社の設立に出資をしてほしいとの申し出があったのだ。

KAPPAブランドの経営に関しては、その人物にノウハウがあるといい、32億円かかるという資金のうち、半分近い12億円をフェニックスが出すということで新たに運営会社BASIC SPORTSを設立。こうしたいきさつから、KAPPAブランドを立て直したのは当時のフェニックスだという自負があり、こののち日本の市場でフットボールウェアやトレーニングウェアを中心とした販売を行い、世界的なブランドの立て直しをすることができた。